像高102センチメートル、ヒノキ材割矧造(わりはぎづく)りで、表面は黒漆仕上げです。頭部の造作から、製作当初は十一面観音であった可能性があります。細部の彫り方が丁寧で、顔の表情などには運慶風の様式がみられるため、鎌倉時代後期(13世紀末)の作とされています。
この仏像は、像高102.0センチメートル、ヒノキ材の割矧造(わりはぎづく)りで、目に玉眼(ぎょくがん)をはめ込み、表面は黒漆仕上げです。頭髪は、筋彫りで髻(もとどり)を高く結い、白毫相(びゃくごうそう)、三道相(さんどうそう)を表します。両腕のひじを曲げ、左手に蓮華(れんげ)を持ち、右手は五指を軽く伸ばして立て、腰をやや左にひねり、右足をやや開いて立っています。
衣は天衣(てんね)、条帛(じょうはく)を着け、折り返し付の裳(も)、腰布、両腰あたりをU字形にわたる帯状の衣を着けています。頭部には頭上面を差したと思われる小孔十個が認められること、両ひじから先が後補であることから、当初は十一面観音であった可能性もあります。
目鼻や口、耳の彫りが丁寧で充実し、引き締まった顔の表情や切れ上がった目尻、衣の衣文など運慶(うんけい)風の様式が見られることから、鎌倉時代後期の13世紀末のころに製作されたものと推定されています。