密教の灌頂(かんじょう)の儀式などに用いられた絹本著色(けんぽんちゃくしょく)の掛幅装(かけふくそう)で、全12幅あります。品格の高い顔の表現、文様や緻密な筆使いから、室町時代前半ころ(14世紀から15世紀)の製作とされています。
(写真は十二天のうち「帝釈天(たいしゃくてん)」です。)
十二天画像は、帝釈天(たいしゃくてん)、火天(かてん)、焔魔天(えんまてん)、羅刹天(らせつてん)、水天(すいてん)、風天(ふうてん)、毘沙門天(びしゃもんてん)、伊舎那天(いしゃなてん)、梵天(ぼんてん)、地天(じてん)、日天(にってん)、月天(がってん)で、 地上における八方位(東、西、南、北、東南、南西、西北、北東)・天上・地下の十方位を各々守る十尊の天部と、太陽と月とを神格化した日天、月天を加えた十二尊の天部に対する総称で密教の灌頂(かんじょう)の儀式などに用いられました。画像は絹本著色(けんぽんちゃくしょく)の掛幅装(かけふくそう)で、それぞれ縦82.3から82.5センチメートル、横39.2から39.3センチメートルです。
十二天の身体を描く墨線には、勢いがあって繊細であり、澄んだ強い目差し、品格の高い顔を表現しています。
さらに文様や細密な筆使いは当寺所蔵の(注1)真言八祖画像にも表されています。このような技法から室町時代前半ころ(14世紀から15世紀)の製作と推定され、密教の教義がこの地に及んだことを伝える資料として貴重です。