千葉県指定有形文化財「猿田神社本殿」の保存修理工事が始まります!
千葉県指定有形文化財「猿田神社本殿」
大同2年(807年)に社殿が建立され、猿田彦大神、天鈿女命、菊理媛命を祀っています。
創建以来、源頼朝や足利氏、千葉氏など多くの武将の寄進をうけてきました。
また、古くから下総・上総だけでなく、常陸国の人々からの信仰を集め、七五三参りをはじめとして今も多くの参拝客が訪れています。
県内でも珍しい桧皮葺の屋根をもつ本殿は、今から約340年前の延宝8年(1680年)に改築されたものです。
さらに、神社を取り囲む広大な森にはスダジイが生殖し、千葉県の天然記念物に指定されています。
正面3間、側面2間の三間社流造で、桧皮葺の屋根の棟に千木、勝男木を置き、正面に唐破風の向拝が付けられています。
内部は外陣と内陣に分かれ、三基の宮殿を安置しています。
天井、側壁の彩色画や彫刻には豪壮で華麗な桃山時代の特色がよく表れています。
今年の夏から本殿をすべて解体して組み直す、大規模な保存修理工事が始まります。期間は令和4年から8年の5年間の予定です。
本殿は建立されてから今まで、大きな改修がされた記録は残されていません。
そのため、床下から柱中部にいたるまでシロアリの食害を受け、建物全体が歪み、長い間風雨にさらされたことによってあちこちに傷みが見られる状況でした。
かつては色鮮やかだった外部の塗装や、彫刻に施された極彩色、内部の彩色画も風化して色あせてしまっています。
こうした状況から、建物全体の修理工事が必要とされてきました。
令和4年度は、本殿を解体する作業を行います。解体していく中で、見えなかった部分の傷み具合が判明したり、新しい事実が見つかることもあります。
屋根がすっかり取り外されました!
祭神を祀る3つの御殿が見えています。この後、御殿は一度避難させ、工事が進められます。虹梁や軒廻りの意匠を間近で見ることができました。
本殿の建物がすべて解体されました。
地面がむき出しになり、礎石が見えています。
取り外された彫刻は、もともと何色だったのか、どのような技法が用いられたのかなど、専門業者による調査が行われます。
解体した柱などの部材は損傷具合を調査し、再利用できるものは再利用します。建築当初から使われている部材は補強を施してなるべく残し、後世に引き継いでいきます。
全解体したことによって、目に見えなかった部分の損傷具合や、工事跡から過去の修復履歴が明らかになりました。
驚くことに、当初、本殿の外観は漆で塗られていたことも判明しました。また、屋根には現在はない千鳥破風が取り付けられていたことが分かりましたが、雨漏りなどで傷み、管理のしやすさを優先して現在の形になったと考えられます。
今回の解体の中で判明した内容は、令和8年度に作成する報告書にまとめられる予定です。
令和5年度は解体した部材の繕い、彫刻の塗装、屋根下までの建物の組立てを予定しています。
さらに、耐震診断を行い、長く後世に残していくために必要な構造補強計画を立てていきます。
建物の組み立てが進んでいます。
部材の色の残り具合から建築当初の配色を検討して、柱などの部材を着色しています。
また、耐震診断の結果を踏まえて、床下には構造補強のための鉄骨が組まれました。文化財への負担が少なくなるように設計されています。
組み立てに用いる部材は、建築当初のもの(当初材)、過去の修理で取り換えられたもの(後補材)、今回新しく取り替えるものがあります。当初材をできるだけ再用し、場合によっては傷んだ箇所を継木などで補修します。
なお、今回新しく取り替える部材には、いつ取り替えた部材なのかがわかるように、焼印もしくは墨書きで年代を入れています。
専門家の調査と念入りな検討をふまえて、彫刻の着色も進んでいます。
写真(右下)は軒下を飾る木鼻(唐獅子)です。猿田神社の本殿には龍や十二支をはじめとする彫刻が装飾されており、今回の事業で本殿とともに鮮やかな極彩色がよみがえります。
建物の組立はほぼ完了し、屋根の葺工事が進んでいます。猿田神社本殿は県内でも数少ない桧皮葺の屋根で、修理前の形状を踏襲して桧皮を葺いていきます。
写真(1段目左)は令和6年12月の様子で、屋根の組み上げが完了しました。
そこから桧皮を葺いていき、3月には写真(1段目右)の状態まで屋根の形が出来上がってきました。写真(2段目左)は拡大した写真で、厚く何層にも桧皮を重ねているのが分かります。写真(2段目右)が今回取り替えられた古い桧皮で劣化し、ボロボロになっています。
写真(3段目)は塗装を施し、軒下に取り付けられた彫刻です。彫刻類の塗装作業も進行中です。
来年度は修理工事の最終年度になります。残りの屋根の葺工事、建物の組立のほか、錺(かざり)金物の修理、取り付けを実施します。
修理現場の見学会を6月に開催予定です。詳細が決まり次第、こちらとイベントカレンダーでお知らせします。
本殿の見学はできませんが、参拝自体は可能です。
御祈祷など、詳細については猿田神社までお問い合わせください。
猿田神社 お問い合わせ先 0479-33-0362