奈良時代から使用されている最も古い仏教法具の一種で、密教修法の際にこれを振って音を出して使いました。平安時代初期の製作とされています。現在、奈良国立博物館に出品されています。
鐃は最も古い仏教法具の一種で、わが国では奈良時代から使われています。とくに密教系の法具として密教修法の際に鐃を振って音を出して用いるものです。
扁楕球形の鈴と棒状のにぎり、上部先端に三鈷(さんこ)をそなえた形で、総長28.0センチメートル、鈴の長径9.9センチメートルの鋳銅製です。
鈴部はつぼみ形で半面には横6センチメートルほどの亀裂があり、ゆがんだ部分から鈴子が失われています。力強い三鈷の形などからみて平安時代初期の製作と考えられ、その製作も優れています。
この鐃は江戸時代にはすでに圓福寺(えんぷくじ)の宝物になっていたようで(注釈1)「玄蕃日記(げんばにっき)」によると、天保2年(1831)時の代官に本品を見せたという記述があります。類品は、日光の二荒山神社出土品、奈良の東大寺、茨城の鹿島神宮蔵品などが知られているのみで極めて少ない資料です。