名所めぐりが江戸時代に流行し、「銚子」を題材として取り上げられた名所記が多数出版されました。本絵図は、天明年間(1781年から1789年)ころの銚子の名所14ケ所の風景画とそれらの説明文が記されており、当時を考証する貴重な資料です。
紙本淡彩銚子名所絵図は、江戸時代天明年間(1781から1789)ころの銚子の名所十四ケ所の風景画とそれらを説明する小文が記され、絵図には、淡彩の素描(すびょう)で墨線(ぼくせん)だけで表現されているもの、色や模様の指定をしているものがみられます。
絵図は、元来めくりものでしたが、現在縦27.4センチメートル、横941.3センチメートルの巻子状(かんすじょう)に仮表装しています。
作者については、「犬若」の図に「嵩谷(すうこく)」の落款(らっかん)が押印してあり、江戸時代の英派(はなぶさは)の画家「高嵩谷(こうすうこく)」ではないかという意見もありますが、確認されていません。
江戸時代、社寺参詣をはじめとして、各地の名所・旧跡を訪れる旅が盛んで、それが名所記など案内書の出版を促していったようです。この絵図は、その中でも風景写生図巻制作史上、早期のもので、天明年間の銚子地方を考証する上で貴重な資料です。