■市長コラム85 【澤 孝子さん】 銚子市長 越川 信一 「銚子ふるさと大使」をお務めいただいた浪曲師の澤孝子さんが5月21日、82歳で逝去された。銚子の外川で生まれ野尻に育った澤さんは昭和29年、14歳で二代目広澤菊春に入門。 豊かな感情表現と独自の節回しが人気を呼び、多くのテレビやラジオにも出演。日本浪曲協会会長を務めるなど、浪曲界の第一人者として活躍した。銚子・高神出身の澤順子さんを 弟子に迎え、銚子愛が深く、細やかな心配りの方でもあった。 澤孝子さんが「銚子ふるさと大使」に就任したのは平成27年。東京浅草の木馬亭で開かれた「澤孝子の会」、満員の観客の前で、委嘱状を交付させていただいた。 「銚子ふるさと大使として、生涯、銚子の良さをアピールしてまいります」と抱負。 この日の演目は「大新河岸母子河童」。大内綾子さん(大新旅館)の利根川カッパ伝承の原話をもとに、大内恭平村長(元銚子市長)のラブコールを受けて大西信行氏が書いた作品だ。 舞台の「テーブル掛け」に犬吠埼が描かれ、「かっぱと水に愛をこめて」の手ぬぐいも披露された。 回船問屋の若旦那が「カッパを見せ物にして一儲けしよう」と企み、銚子の利根川・大新河岸に住む子ガッパ「河太郎」をつかまえ、高瀬船で江戸へと向かう。そこに母ガッパが現れ、 力を振り絞って立ち向かい、「河太郎」を救い出すストーリー。澤さんの情感豊かな浪曲で、河太郎が母と手に手を取って再会、涙するシーンが胸に迫った。 銚子市役所受付には、澤孝子さんの書「夢」が飾られている。日本書鏡院展に出品したその書は、「夢」に向かって挑み続けた澤さんの軌跡でもあり、銚子の夢の実現を願い続けた 澤さんのメッセージでもあるのだと思う。