ちょーぴーのアイラブ銚子 ■第58回「ロクの家」誰でも堂々と来てほしい 宮内博史さんの巻 ◇ギャラリー?シェアハウス?最近話題の「ロクの家」を作った芸術家を直撃だちょ。 「ボランティアをしてるわけじゃなく、街の声に触れて、それを絵にしたいんです。どうぞお気軽に遊びに来てください。例えば、不登校やうつ、発達障害はその人なりの正常な反応です。社会がWおかしいWことにしているだけ。僕も、うつでADHD ( 注意欠如・多動症。発達障害の一種) で不眠。面倒くさい性質だけど恥ずかしくはないです」 宮内博史さんは銚子で創作活動を続ける画家。昨年5月に元民宿だった建物を自ら改装し「ロクの家」をオープンした。ロクの家は、アトリエを備えた多目的空間。開始から約半年、3組の芸術家が滞在し、8回の個展、5回のワークショップが行われた。1時間以上かけて来る人や「作ってくれてありがとう」「銚子を出るのをやめた」という声など予想以上の反響に宮内さんも驚く。 「うれしい。やってよかった」 銚子商業を卒業後、大学で絵画を学んだ。卒業後は宮大工修業をはじめ美術以外の仕事も経験したが長くは続かなかった。「お前なんか何やってもだめだ」と何人にも言われ、土下座させられたこともある。 「今となってはどれもやってよかったけどもう二度とやらない」 鳥取市に滞在して絵画制作をしていたとき「まだ見ていない美術や知らない世界がある」と渡欧を決意。たどり着いたのは世界中から若者や芸術家が集まるドイツ・ライプツィヒ。空き家を子育てや芸術のために利活用する動きが盛んな町だ。 宮内さんが身を寄せたNPO「日本の家」もそのひとつ。名前は発足当初のメンバーにたまたま日本人が多かったことから。みんなで食事を作って食べる活動「ごはんの会」では、人種も宗教も違う、言葉も通じない約80か国の人と過ごし、大学教授や泥棒、アルコール中毒者、難民の若者などそれまで接したことがないような人と文字どおり同じ釜の飯を食べた。世界の問題を肌で感じたこの経験が今のロクの家に活かされている。 「プロのサポートはできないけど、例えば来てくれた人とただチェスをやるとかコミュニケーションをとることで社会を支えられるんじゃないかと思う」 最近気になるのは、子どもと絵を描くと「この色ここに塗っていい?」と何十回も聞かれること。「僕の絵は自由じゃない」「僕の命は自由じゃない」に聞こえるからだ。日本は若者の自殺率が世界一高い。 「子育て中の皆さん、子どもを産み育てるのは本当にすごいこと。心から尊敬します。だからこそ愛情たっぷりの子たちが、将来追いつめられる可能性が世界一だなんて嫌でなりません」 もちろん、正月から絶望的な気分にさせたいのではない。 「つまずいたら受け身を取れたほうがいいでしょう?ロクの家では人と話したくなければ黙っていてもいいので、堂々と来てほしい」 宮内さんは近々市内にもう1軒、子どもが利用しやすい多目的空間を作る予定だ。 ロクの家の次回展示は9日からだちょ。 ◇ロクの家 大橋町15-5 水曜日・土曜日18時から22時 【メール】hello@6haus.com ◇ロクの家 夜のギャラリー 有馬尚史映像作品「wool」 羊の生きる時間を描いた17分の映像作品。換気と消毒をしながら繰り返し上映します 会期:1月9日、1月13日、1月16日、1月20日、1月23日、1月27日、1月30日 (水曜日と土曜日) 駐車場は鈴木青果店舗斜め向かいの駐車場をご好意で使用させていただいています。