■出会いや経験で人生は豊かに 排除もったいない 地域おこし協力隊・複業声楽家 河野陽介 さん 神栖市出身。佐原高校卒。東京藝術大学卒。茨城県人権教育講師。声楽家のかたわら、性的マイノリティ当事者のネットワーク作りや、研修・講話の講師を務める。 皆さんの「ふつう」って何ですか?逆に、皆さんの「ふつうじゃない」って何ですか?僕の場合、声楽家という働き方や、同性愛者という生き方が「ふつうじゃない」と言えるかもしれません。でも、それが僕にとっては「ふつう」のことです。皆さんは自分のことを「ふつう」だと思いますか? ◇世界は多様性にあふれている 同性愛者であることを公言して活動しているせいか、他人からマイノリティ(少数派)な部分を打ち明けられる機会が多いです。ストレス性の難病を患っている人、児童養護施設出身で対人関係に不安を抱えている人、視覚障害の人、不倫に悩む人などなど。そんな人たちの身の上話や相談を通して、多様な人生観に触れるたび感じるのは、「世界はなんて多様性にあふれているんだ! 」ということ。誰にでも、人に言えない秘密や悩みの1つや2つ、ありますよね。でも、人は追い詰められると、最終的に誰かを傷つけるか、自分自身を傷つけるかに至ってしまいます。それは絶対に避けたい。 隠しごとに足を引っぱられて身動きが取れなくなっている人は少なくない。僕もかつては、同性愛者であることに悩みました。でも、何とかそれを乗り越えられたから、同じような境遇で苦しんでいる人に寄り添えたらという思いで活動してきました。 もし苦悩を乗り越えて自分を好きになることができたら、それを自分の強みに変えて、武器にして、仕事にだってできるかもしれない。自分に自信を持ってもらうためのお手伝いがしたいんです。 ◇理解せずとも排除せず 以前、高校生に人権についての講話をした時、「理解せずとも侵害せず」と感想を書いてくれた子がいたんです。シンプルで的確な表現にハッとしました。以来、少し付け足して、「理解せずとも侵害せず、理解せずとも排除せず」と標語のように掲げるようになりました。 差別や偏見は恐怖心から生まれると思います。誰だって、知らないこと、分からないことが怖いのは当たり前。でも、まずは知ること、これが大事。本を読んだり映画を観たり、インターネットで調べたり。自分から情報に近づくことができたら、きっと気づきや学びを得られて、知りたい誰かのことがずっと想像しやすくなるはずです。もし理解できなかったとしても、それを理由に排除したり、権利を侵害したりするのは違います。 ◇優劣じゃなくて単なる違い 太っているか痩せているか、右利きか左利きか、同性愛者か異性愛者か。どれも単なる違いで、優劣ではありません。ときと場合によって、違いが顕著に見えるだけです。 人生は、出会いや経験によって、より楽しく、より豊かなものになります。自分と違うからと誰かを排除し、出会いや経験の機会を失うなんて、とてももったいないことだと思いませんか?   ■NEWS 県内でも同性同士や事実婚にパートナー制度 昨年11月、松戸市が同性同士や事実婚のカップルを「パートナーシップ」として公認する制度を導入しました。県内では千葉市に続いて2例目です。市営住宅の入居や病院での手術同意手続きの場面などで生じてきた生きづらさの軽減・解消を応援する動きが、行政でも少しずつですが広がっています。 ■STUDY 性的マイノリティとは 性愛の対象がどこに向いているか・向いていないかを表す「性的指向」や、自己の性別をどのように認識しているかを表す「性自認」といった概念を基準にしたときに、少数で非典型な人たちのこと。同性愛や性同一性障害といった人たちが含まれます。