■社会に包容力足りない 精神科気軽に受診して 精神保健福祉士 石上るみ子 さん 銚子こころクリニック理事。昭和60年から銚子の精神医療の現場に携わる 障害があるかどうか、外見で判断できるものばかりではありません。 最近では、発達障害が背景にありうつ状態で来院される方が増えています。社会に包容力がなくなっている証拠だと感じます。 ◇増えている大人の発達障害 発達障害は脳機能の発達のバランスの違いで得意なことと不得意なことの差が大きいことが特性です。コミュニケーションや対人関係、集団生活、社会生活などに支障をきたすことがあります。子どものときからその特徴が表れやすいですが、社会的不適応として表面化するのは大人になってからです。 例えば職場で上司への伝言を忘れたり、指示されたとおりの仕事ができなかったりします。そこでひどく罵倒されたり、パワハラを受けると、抑うつ状態になることもあります。ただこの場合、うつ状態はあくまでも二次障害。うつ病の薬を飲んでも発達障害の特性に気づいて対策しないと改善しません。 ◇少しの工夫で上手くいく まずは自分の得意・不得意を「これはできない」「できるけど時間がかかる」と周りに伝え理解してもらうこと。次に、職場環境や職場の人間関係に配慮してもらうこと。そうすれば充分働ける人はたくさんいます。今働いている人に能力を発揮してもらうことは会社にとっても有益なはずです。 配慮を要する人がいるということを知ってほしいです。障害でなくても得手不得手は誰にでもあります。尋常じゃない怒られ方をすれば誰でも傷つくし、病むこともあります。病気や生きづらさはいつでも誰でも抱える可能性があるのです。 ◇日本初の精神衛生都市宣言 欧米では、戦後、入院中心から地域で自立できるよう支援体制の転換を図りました。一方、日本では精神障害者を自宅に監禁する制度が合法的に行われていた歴史があります。家族の負担が重いのも特徴です。その中で銚子市は昭和38年に日本で初めて精神衛生都市を宣言した自治体です。これは当時としてはとても画期的なことでした。銚子は早くから障害者を地域で支えようという気概を持った街だったんです。 ◇早期の発見と治療が有効 障害者への偏見は若い人ほど少ないと感じます。 ところが、本人が障害年金や障害者手帳をもらいたくても親が子どもの障害を認められずに拒否するケースがいまだにあります。どんな病気でも早期発見早期治療が肝心です。精神の病気は特にそう思います。「世間体が悪い」「うちの子は違う」と親が子どもの病や障害を受け入れるために時間がかかり、結局抱えきれなくなってから受診しても手遅れです。 夫から「頭がおかしい」と言われ続けた妻が来院したことがあります。病気でもない妻に暴言を吐き続ける方がおかしいんですがそれでも医師から「大丈夫」と言われれば安心するでしょう。 精神科を受診するのは抵抗があると思いますが、どうぞ気軽に相談してください。