令和2年度予算を含む各議案の提案にあたり、新年度の市政運営の所信を述べさせていただきます。
昨年7月、国は再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電の促進区域の指定に向けて、全国で4つの有望区域を選定し、その一つに銚子市沖の海域が選ばれました。国・県・市・漁業者・有識者などからなる「千葉県銚子市沖における協議会」が設置され、促進区域の指定や発電事業者の公募に向けた協議が進められています。
協議会で市は、名洗港のメンテナンス港としての活用や地域経済の活性化につながる取組を要望しています。洋上風力発電事業が銚子創生の起爆剤となるようしっかりと取り組んでまいります。
厳しい財政状況が続いています。財政構造を根本から再構築し持続可能な財政運営を確立するため、ロス(ムダ)の削減を進めるとともに、税収などの歳入増加、財源確保に全庁を挙げて取り組みます。
銚子創生を成し遂げるためには、将来への投資(種まき)も同時に進めていかなければなりません。限られた予算の中にあっても、銚子市総合計画の重点事業に位置づけた子ども・子育て支援や企業の立地・再投資の促進、洋上風力発電事業などを推進してまいります。
銚子西中学校整備と広域ごみ処理施設建設の二つの大きな事業は、ともに令和3年度からのスタートを目指し整備を進めています。新年度中に施設が完成する予定です。
東京2020オリンピック聖火リレーが7月3日、本市を駆け抜けます。銚子ポートタワーを出発し、銚子漁港を経由して銚子市役所に至る、潮風香るルートです。23名のランナーが聖火をつなぎます。
銚子市をPRするまたとない機会です。多くの市民の記憶に残るものにするためにも、聖火リレーの成功に向けて、オール銚子の体制で準備を進めてまいります。
一般会計予算は、歳入では、市税は人口減少などによる影響はあるものの、個人所得が回復傾向にあるため、前年度の当初予算と比較して増加を見込んでいます。地方消費税交付金についても、消費税等の税率の引上げによる増加を見込んでいます。
地方交付税は、地方消費税交付金の増加などにより普通交付税が減少する一方、ごみ処理広域化施設整備経費の増に伴い震災復興特別交付税が大幅に増える見込みです。一般財源は前年度と比較し、約22億2,700万円、13.1%の増加となっています。
歳出は、職員数の減により人件費が減少するものの、ごみ処理広域化施設整備経費、衛生センター基幹的設備改良経費、銚子西中学校整備経費の増により、大幅に増加しています。
収支不足を補うための財源対策として、令和2年度から公営企業化する下水道事業会計への基準外の出資金で、通常であれば一般会計での負担が避けられない2億6千万円について、水道事業会計からの長期借入により対応することとしています。加えて、平成31年度(令和元年度)当初予算と同様、介護保険事業特別会計への繰出金約1億8千万円についても、補正予算で対応することとしました。
一般会計の予算総額は、276億2,800万円、公営企業会計は、水道及び病院事業会計に、令和2年度から下水道事業会計が加わり3会計で、69億3,100万円、特別会計は、国民健康保険事業ほか2会計で144億6,600万円、運用基金は、土地開発基金5億4,715万4千円及び育英資金貸付基金1億213万円となり、全体の予算総額は、496億7,428万5千円、前年度と比べ8.2%増となりました。
平成27年10月に策定した第1期の「銚子市しごと・ひと・まち創生総合戦略」の計画期間が令和元年度で終了します。同戦略では、豊かな地域資源を活かしながら、若者が求める「しごとづくり」を第一の目標としてきました。「ひとづくり」「まちづくり」の推進によって、「しごと」がひとを呼び、「ひと」がまちを創る。「まち」にまた新たな「しごと」が生まれる。このような好循環を目指してきました。
人口減少と少子高齢化は依然として進行しています。さらなる集中的な対策と切れ目ない取組が必要なことから、第2期の総合戦略を3月中に策定します。総合計画の取組とあわせ、戦略に定めた施策を着実に推進してまいります。
新年度の主要な施策について、総合計画に掲げるまちづくりの視点に沿って概要を申し上げます。
まず、「ライフステージの視点」における「生まれる・育つ」の場面です。
3月に、第2期となる子ども・子育て支援事業計画を策定します。計画に基づき、子育て支援の充実に努めます。
高額な治療費のかかる特定不妊治療について助成を始めます。子どもを持ちたいと願うご夫婦の経済的負担を軽減し、子どもを産み育てやすい環境をつくります。
児童福祉法が改正され、児童虐待の発生を予防するため、市町村が身近な場所で子どもやその保護者に対し福祉的な支援を行う「市区町村子ども家庭総合支援拠点」の設置が求められています。子育て世代包括支援センターと一体的に運営できるよう、令和3年度の開設に向けた準備を進めます。
子どもたちが将来に向かって、たくましく生きる力を身につけ、ふるさと銚子に誇りを持って成長できるよう、確かな学力・豊かな心・健やかな体を育む質の高い学校教育を目指します。
来年4月の銚子西中学校の開校に向けた準備も最終段階を迎えます。校舎改修を始め、スクールバスロータリーやソフトテニスコートの整備など、生徒にとってより良い学校環境となるよう準備を進めます。
生涯にわたって健康で活力のあるライフスタイルを提供する場として、各種スポーツ大会、レクリエーション活動を実施します。
スポーツ交流のひとつである「銚子さんまマラソン」は、新年度も引き続き、関係団体のご協力をいただきながら、より良い大会を目指し準備を進めます。
「銚子市歴史文化基本構想」に盛り込んだ文化財の保存・活用に関する計画を発展させた「文化財保存活用地域計画」を策定し、新年度中の文化庁の認定を目指します。文化財を活かした観光拠点の整備と、市民と連携した文化財の保存と活用の仕組みづくりを進めます。
「銚子資産活用協議会」が実施する歴史文化を活かした観光拠点づくり事業や文化資産次世代継承事業を推進します。「銚子市日本遺産活用実行委員会」が実施する活動を支援し、来訪者の増加につなげます。
「千葉の地層10選」に犬吠埼の「銚子の白亜紀浅海堆積物」と「屏風ケ浦」が選ばれました。ジオパーク活動に弾みがつくものと期待しています。
千葉県内で唯一の銚子ジオパークは、4年に一度の再認定審査を本年秋に迎えます。日本ジオパークとしての必要な体制整備に努めます。
国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成、貴重な地域資源の保全、ふるさと教育、地域振興に資するため、「銚子ジオパーク推進協議会」が実施するジオパーク活動を積極的に支援します。
千葉科学大学は、地域の「知の拠点」として、人材の育成や研究・開発などを進めています。産業、教育、観光、防災、洋上風力発電の活用など、広く大学との連携を進めます。
令和元年の銚子漁港の水揚げ量は、約28万トンで9年連続日本一となりました。今後も日本一の水揚げ量を確保していくため、千葉県と連携し、漁業者にとって利便性の高い漁港づくりを進めます。
令和元年度は、臨港道路の補修などが行われ、水揚げ後の円滑な運搬ができるようになりました。新年度は、銚子市漁業協同組合が事業主体となり進められる第3卸売場の高度衛生管理型市場への建て替えに向けた設計などが行われます。市も、円滑な事業の実施に向け支援してまいります。
昨年の台風により被害を受けた農業者に対し、継続して復旧の支援を行います。
西部地区で拡大しているイノシシを始めとした有害鳥獣による農作物被害を防ぐため、地域住民、猟友会、農業団体などで組織する「銚子市有害鳥獣被害対策協議会」と連携し、継続的な捕獲と電気柵の設置に取り組みます。
東総台地地区広域営農団地農道は、流通体系を確立するための基幹道として、事業主体の千葉県や関係市町と連携し整備を進めています。
新年度は、東総台地2期地区の残り約1.3キロメートル区間の橋梁上部及び道路の一部工事が行われる予定です。
地域経済の活性化に向けて、中小企業の人手不足や事業承継は喫緊の課題です。地域を担う人材の確保を図るため、商工会議所や地元金融機関と連携し、異業種交流やビジネスマッチングに取り組みます。
企業立地等促進補助制度により、新たに事業拠点を設ける民間事業者や事業の拡充・継続を目指す地元事業者に対して支援を行います。
観光産業は台風被害などの影響により、依然厳しい状況にあります。
銚子版DMO事業は、企業版ふるさと納税の仕組みを活用して、着地型観光開発や訪日外国人を銚子に受け入れる事業を展開していきます。
銚子みなとまつりは、オリンピックの開催時期を避けるため、5月に前倒しして開催します。
再生可能エネルギーについては、本市の恵まれた自然環境を活かした積極的な活用を推進します。
今後は、洋上風力発電誘致の機運を高めるため、市民向けの説明会を開催していきます。協議会を立ち上げ、地域貢献策や経済波及効果について市内の関係者が議論する機会を持ちたいと思います。
銚子電力株式会社では、市内で発電された電力を地域で消費する再生可能エネルギーの地産地消や事業収益の地域還元に取り組み、地域活性化の一助となるよう事業を進めます。
地球温暖化対策については、これまで続けてきた住宅用太陽光発電システム設備の設置に加え、新たに、太陽光発電などで作り出した電気を蓄えておく「住宅用蓄電池」の設置費用に対する補助を行います。
再生可能エネルギーの活用を進め、地球温暖化防止のための対策を積極的に進めます。
地域包括支援センターは、新年度も同一の法人により運営されることになりました。高齢者の暮らしを地域でサポートするとともに、引き続き地域包括ケアシステムを推進していきます。
新年度は、地域密着型サービス事業者による事業所開設を支援し、地域包括ケアシステムの基盤整備を促進します。
介護予防・日常生活圏域ニーズ調査や在宅介護実態調査の結果をもとに、「高齢者福祉計画・第8期介護保険事業計画」を策定し、高齢者保健福祉施策を推進してまいります。
障害のある人もない人も、住み慣れた地域でつながり合い、一人ひとりが尊重される社会を目指します。
4月に開設する「あおぞら三崎」に「地域生活支援拠点」を設置します。地域生活支援拠点では、「断らない相談支援」の理念のもと、24時間の包括的な相談支援体制を構築してまいります。
精神障害者の自立支援のため、重度心身障害者医療費給付改善事業の対象を拡大し、8月からは、精神障害者保健福祉手帳1級所持者を対象に加えます。
「児童発達支援センターわかば」では、施設の長寿命化を図る工事を実施します。児童発達支援センターの運営方法については、地域の中核となる機能強化を図るため、アウトソーシングを含めた管理運営を検討します。
生活困窮者自立支援事業を引き続き実施します。市役所が市民にとって最も身近な相談窓口であるということを常に心に留め、生活保護に至る前から、生活困窮者の自立に向けた切れ目ない支援を進めます。
空家対策については、「銚子市空家等対策計画」と「銚子市空家等の適切な管理に関する条例」に基づき、空家の所有者に適切な管理を促します。地域の防災・衛生に深刻な影響を及ぼしかねない空家から、住民の生命・身体・財産を保護し生活環境の保全を進めます。
空家を地域の資源と捉え、所有者や地域住民、各分野の専門家と協力・連携し、空家や跡地の利活用を検討し、空家バンクの登録を進めます。
市立病院は、銚子市医療公社が指定管理者になってからまもなく5年が経過します。この間、医師をはじめとする病院スタッフによって患者に寄り添った医療の提供がなされ、令和元年度も病床稼働率は高い水準を維持しています。
新年度は、さらにこれを推し進め、香取海匝保健医療圏で不足する脳卒中などの患者を対象とした回復期リハビリテーション病棟の開棟を目指します。整形外科や乳腺外科などにおいて手術を早期に再開し、地域に必要とされる病院として医療機能の充実に努めます。
地域に必要な医療・介護の提供が切れ目なく行えるよう銚子市医師会や近隣医療機関、介護・福祉施設との連携を強化してまいります。
国民健康保険事業の運営については、平成31年3月に改訂した財政計画に則り、国保財政の健全化に努めます。
国民健康保険料の収納率向上対策により歳入の確保を図ります。
短期人間ドックなどへの助成、特定健康診査やジェネリック医薬品の利用促進、健康づくり講演会の実施などにより、生活習慣病の発症予防・重症化予防と医療費の適正化に努めます。
自然災害の大規模化・頻発化により、災害への備えが大きな課題となっています。昨年の台風15号・19号の検証結果を踏まえ対策を進めます。
新年度は、津波・洪水・土砂災害・避難情報などを取り入れた総合的なハザードマップを作成、全戸に配布します。
消防署の高規格救急自動車の更新整備を行います。最新鋭の資機材を活用して救命率の向上、救急体制の充実強化を図ります。
消防団への加入促進や消防本部と消防団の連携強化、防災士へのフォローアップによる自主防災組織の設置促進などの取組により、地域防災力の向上に努めます。
多様化・複雑化する消費者トラブルを未然に防ぎ、日常生活の安心・安全の確保を図ります。今後も専門相談員による相談、啓発活動の強化に努め、消費者行政の推進に取り組みます。
市民の皆さんのご理解とご協力により、ごみの減量化は着実に進んでいます。生ごみの減量や資源ごみの適切な分別について、さらに周知を行い、引き続きごみの減量と資源化率の向上に努めます。
老朽化した衛生センターの長寿命化を図るための改良工事は、新年度に完了する予定です。処理量に合わせた適正規模の施設で効率的処理を実現します。
銚子連絡道路は、国道126号銚子市三崎町から旭市八木区間の延長5.7キロメートルのバイパス整備が進められています。現在進められている横芝光町から匝瑳市間の整備とあわせ、全線の早期完成に向け、国・千葉県に働きかけます。
国道356号銚子バイパスについても、全線の早期完成に向け、千葉県へ要望を行います。
台風や豪雨による利根川の増水・浸水対策として、利根川沿岸の堤防整備計画の早期策定や築堤を国に要望してまいります。
市道や河川の整備については、厳しい財政状況にあっても、できる限り必要な整備が行えるよう、国の交付金や地方債を活用し、道路の舗装修繕や橋りょうの点検・修繕を計画的に進めます。道路反射鏡、道路照明灯、区画線の設置などの整備を進め、交通事故のない安全・安心なまちを目指します。
上水道の整備については、老朽化した配水管約2.7キロメートルを更新整備するほか、受託工事として森戸町に建設が進められている広域最終処分場への給水管約2.0キロメートルを整備します。
平成29年度から継続事業として進めている本城浄水場の送水ポンプ、監視制御設備、浄水池などの更新整備は、新年度中に完成予定です。新設する浄水池の完成後は、東総広域水道企業団からの受水を段階的に増量し、老朽化している浄水場の負荷を低減させて、長寿命化を図ります。
下水道事業については、新年度から地方公営企業法を適用し、企業会計へ移行します。
芦崎終末処理場や管渠など下水道施設については、企業会計移行後もストックマネジメント計画に基づき適切な維持管理に努めます。
移住・定住促進策の一つとして、3大都市圏をはじめとする都市地域から人材を積極的に誘致し、「地域おこし協力隊員」として委嘱します。
隊員には地域力の維持・強化を図るため、地域おこし支援や住民の生活支援などの地域活動を通じた活躍を期待しています。
本市には、2千人を超える外国人住民が生活しています。年々増加する外国人住民にとっても生活しやすい環境整備が必要です。文化庁の「地域日本語教育スタートアッププログラム」を活用して、新たな日本語教室の設置を目指します。「銚子市国際交流協会」と協力し、外国人住民が、生活する上で必要な日本語や生活のルールなどを学ぶ場、地域住民と交流する場づくりを進めます。
これまで、女子ソフトボール台湾代表チームのキャンプの受入れを行うなど、台湾との交流を深めてきました。オリンピックのホストタウンとして登録されたことを契機に、さらに交流が活発化しています。中でも桃園市とは、灯台・漁港・洋上風力発電のまちとして、交流が進んでいます。友好交流協定の締結を予定しています。
ライオンズクラブをはじめとした民間交流も含めて、これまで築いてきた台湾との関係をより一層深めていきます。
東総地区広域市町村圏事務組合が取り組んでいる広域ごみ処理施設の整備は、着実に進められています。
ごみ処理広域化推進事業は、国の震災復興事業に位置付けられ、本市の財政にとって非常に有利な条件で進められる事業です。令和3年4月の稼働に向けて、引き続き協力していきます。
市税は、市の歳入の根幹をなすものであり、未収金の縮減と徴収率の向上は本市の最重要課題です。税負担の公平性と自主財源確保のため、期限内納税の周知・啓発と公正な賦課徴収を徹底します。
市税以外の債権についても「銚子市債権管理基本計画」を着実に推進し、未収金の縮減を図り、より一層の歳入確保を目指します。
公共施設の再編については、「公共施設等総合管理計画」に掲げた、20年後の延べ床面積30%の削減を実現するため、地域住民や施設利用者に施設の客観的なデータを示し、市民との合意形成を図りながら、施設の統廃合・集約化などに取り組みます。
中でも、市庁舎、青少年文化会館、体育館などの主要な公共施設は、あり方について、優先的に検討していきます。
利用予定のない市有財産は、個別の問題点などを整理しながら、公募型プロポーザル方式などにより積極的に売却・貸付を進め、財源の確保に努めます。
10月1日を調査期日として、国勢調査が行われます。5年ごとに行われる国勢調査の結果から得られる人口は、地方交付税の算定に使われます。市民のご理解とご協力を得て、調査を正確かつ円滑に進めます。
新年度は、普通交付税の減少や広域ごみ処理施設建設に係る負担増など、より一層厳しい財政状況が見込まれます。市民に向けて行財政改革の推進状況や財政状況を説明し、ご理解いただき、難局を乗り越え財政再建を図ります。
新年度の市政運営と財政再建にのぞむ私の所信の一端を述べさせていただきました。市民の皆さま、市議会議員の皆さまの一層のご理解とご協力をお願いします。
この3月議会には、令和2年度一般会計予算など28議案を提案させていただきました。慎重審議をお願い申し上げます。
令和2年2月25日 銚子市長 越川信一