犬吠埼の植物
※記載してある開花時期は気候などによって前後する場合があります。
海岸崖地の植物
海岸には砂浜、小石の浜、岩や崖地などがありますが、どこも植物の生育地としてはきびしい環境です。
岩や崖地はつねに強い潮風にさらされ、土壌が少なく表面が乾きやすい。そんな条件に耐えて岩の間にしがみついている植物は、特有の形をもっています。
犬吠埼や海鹿島、犬若など古い地層の崖地や岩場でそのような姿を見ることができます。いろいろな崖地植物が集っていることでは銚子は日本有数の海岸といえます。
イソギク(キク科)
開花時期:10月〜12月
静岡・神奈川・千葉各県の海岸に生育し、銚子は分布域の北限にあたる。
千葉県の保護上重要な群落として、この地域のイソギク、ハチジョウススキ群集があげられている。
スカシユリ(ユリ科)
開花時期:6月〜8月
犬吠埼灯台下の崖地の植物群落。
銚子ではハマユリとも言う。
ハチジョウススキ(イネ科)
開花時期:9月〜10月
葉幅は3〜4p。
葉の縁はざらつかず、葉舌に毛がない。
また、握ってもススキのように手が切れない。
タイトゴメ(ベンケイソウ科)
開花時期:5月〜7月
葉が多肉で大きな米粒のよう。大唐米の意味。
ツワブキ(キク科)
開花時期:10月〜12月
葉は厚くて光沢がある。花は秋に咲く。方言はツラブキ、ツヤブキ。
黒潮系の植物
犬吠埼を北限とする植物が何種かあります。これらはかつて南の温暖な地域から、黒潮とともに分布を広めてきたと考えられます。逆に犬吠埼を南限とする植物は見られません。
ハマボッス(サクラソウ科)
開花時期:5月〜6月
朔果:6月〜7月
葉は厚くて光沢がある。花は初夏に咲く。果実の形(写真右)を仏具の払子(ほっす)に例えた名。
ソナレムグラ(アカネ科)
開花時期:8月〜9月
多肉な葉をもつ小さい草。生育している数は少ない。
銚子犬吠埼は分布域の北限である。
ネコノシタ(キク科)
開花時期:7月〜11月
砂丘を形成する。
葉が厚く、ざらざらしていて猫の舌のようなので、この名前がついたとされる。
ハマウド(セリ科)
開花時期:6月〜7月
茎は太く高さ1.5mにもなる。
アシタバに似ているが、開花時期の違いで区別できる。
ラセイタソウ(イラクサ科)
開花時期:7月〜10月
葉は大きく、厚い。
また、表面が細かいしわになり、ざらつく。
ラセイタという毛織物のようなのでこの名前がついた。
ヒゲスゲ(カヤツリグサ科)
開花時期:4月〜5月
葉は丈夫で大きな株をつくる。
褐色が雄花の穂。黄緑色が雌花の穂。
銚子は分布域の北限。
海岸型に変身する植物
もともと内陸に生育するものと同じ種類ですが、長い年月、海岸のきびしい環境に耐えながら形を変えてきたものです。茎が短縮して太くなったり、葉は小型化あるいは多肉になったりして、ときには別の種類かと思うほどです。ハマ○○の名で呼ばれるものもあります。犬吠埼にはその例が多く見られます。
ハマノイブキボウフウ(セリ科)
開花時期:6月〜9月
イブキボウフウの海岸型。
ハマアキノキリンソウ(キク科)
開花時期:10月〜12月
アキノキリンソウの海岸型。
ハマサワヒヨドリ(キク科)
開花時期:7月〜9月
左:ハマサワヒヨドリ
サワヒヨドリ(写真右)の海岸型。
銚子が基準産地。
ハマタカトウダイ(トウダイグサ科)
開花時期:4月〜10月
タカトウダイの海岸型。
マルバノハマシャジン(キキョウ科)
開花時期:7月〜11月
左:マルバノハマシャジン
ツリガネニンジン(写真右)の海岸型。
ノアザミ(キク科)
開花時期:4月〜9月
海岸型のものは花期が遅い。
総苞は粘る。
※総苞:花序全体を基部で包む小さいうろこ状の包みの集まり。
砂浜の植物
砂浜は強い風で砂が飛ばされやすい。そこに生える植物は砂中に深く根を下ろしたり、地下茎を長くはわせたりして、砂の移動に耐えています。銚子では自然のままの砂浜が少なくなりましたが、君ケ浜で砂浜の植物を見ることができます。
君ケ浜の砂浜の植物群落
手前はコウボウムギ、奥はネコノシタの群落。
コウボウムギ(カヤツリグサ科)
開花時期:4月〜8月
砂の移動の激しい浜に生える。地下茎がよく発達。
ハマゴウ(クマツヅラ科)
開花時期:7月〜9月
枝が長く、砂の上をはう。
夏に花が咲き、冬は葉が落ちる。
果実は独特の香りがする。
ハマダイコン(アブラナ科)
開花時期:3月〜7月
ダイコンに似た花が咲く。根は太くならない。
ビロードテンツキ(カヤツリグサ科)
開花時期:7月〜8月
茎や葉に細かい毛が密生。
銚子ではごく少ない。
コウボウシバ(カヤツリグサ科)
開花時期:3月〜5月
砂の移動の少ないところに生える。
ウンラン(ゴマノハグサ科)
開花時期:8月〜12月
北方系の種類。
花の形から海蘭の意味か。
生育は少ない。
ハイネズ(ヒノキ科)
開花時期:3月〜4月
球果:5月〜8月
枝が低くよく茂って砂地をおおう針葉樹。
葉の先は鋭い。
ハマヒルガオ(ヒルガオ科)
開花時期:5月〜6月
全国的に広く分布する。
【番外編】竹久夢二とマツヨイグサ
夢二は、明治の終わりからしばらく銚子に滞在した。
後に発表された「宵待草」の詩は、そのときの印象が下地になったと思われる。
「宵待草」には夕方浜辺に開くオオマツヨイグサがふさわしいが、近年はコマツヨイグサやメマツヨイグサの方が多い。
オオマツヨイグサ |
コマツヨイグサ |